ユダヤ人と資本主義

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『ユダヤ人と資本主義』
 アーブラハム・レオン 波田節夫訳 法政大学出版局 1973

資本主義はユダヤ民族間に社会的分化をひき起し、彼らの経済面での周辺社会への合流及び移住をひき起し、ユダヤ人問題解決の基礎を作った。しかしそれを解決することはしなかった。逆に二〇世紀に入って資本主義大勢が経験した恐るべき恐慌は、ユダヤ人の状況をこれまでになかったほど悪化させた。封建時代に占めていた経済上の地位から追い出されたユダヤ人は、解体期に入った資本主義経済に合流することなどとてもできなかった。資本主義自身は何度も恐慌の襲来をうけながら、まだ完全に自分のものにしていなかったユダヤ的要素の受入れを拒否する。資本主義の矛盾のために滅亡せんとしている中産階級においては、どこでも野蛮な反ユダヤ主義がひろがる。大資本は小市民階級のこのような根強い反ユダヤ主義を利用して大衆を民族主義の旗の下に結集する。ユダヤ人は二つの体制、すなわち封建制度と資本主義の間ですりつぶされ、しかもその各々が相手の解体を促進する。(p122-3)