ヒコーキ野郎たち

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『ヒコーキ野郎たち』
 稲垣足穂 新潮社 1969


 度々のエッセーで述べてきたように、われわれには、外部的にも内部的にも、「我が身をどうかされたい」という、訴え所のない本来的なマゾヒズムがある。この願望が裏返されて、威丈高になったのが即ちサディズムである。この意味のサディズムは、根源的マゾヒズムに対する起爆剤の役目を担当している。マゾヒズム=サディズムの縺れは普通セックスの営みによって代表されている。しかし、このヴァギナ=ペニス両感覚とは別に、エイナス感覚に拠る原始衝動が、そこに居座っている。これの最も純粋なパターンが、幼少年間の自己色情として読み取れる。あたかも成人世界におけるヴァギナ=ペニス両感覚のように、エイナス感覚は幼少年にとっては、取っておきの切札なのだ。(p147)