イロニーと文学

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『イロニーと文学』
 ベーダ・アレマン 山本定祐訳 国文社 1972


ムシルの文体は、パロディ的・イロニー的に綿密に測り尽された活動領域の限界を越えて展開して行くことができるという点において、決定的に広やかな性質をもっているのである。綿密に測り尽された活動領域のもつヘルメス的な諸関係の中では、さまざまの暗示の可動性はついには失われざるをえなくなるからである。かくしてイロニーが単に無拘束的な技巧の遊技以上のものとなり、ひとつの文学的戯れと名づけうるがごとき役割を果すことのできる作品創造の可能性が開かれるのである。(p250)