社会学講義

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『社会学講義』
 アドルノ 河原理・太寿堂真・高安啓介・細見和之訳 作品社 2001


 とにかく概念なくしては思考などあり得ないのです。それでいてこの事実は、概念の自立性を無造作に抹消しようとする最近の社会学に内在する努力と結びつくと、社会学に登場するその都度の概念がいわば名状しがたいもの、根絶し得ないものを備えていることによって、繰り返し改めて社会学を形而上学だという嫌疑に曝させることになるのです。しかし、ここから引き出し得る結論はやはり、実証主義が形而上学と特徴づけるもの一切抜きには、まさしく社会的認識というその内在的な意味からしても、そもそもことは運ばないのだ、ということでしょう。つまり、社会的認識という要請自体に何かキマイラ的なもの―私はほとんどこう言いたいですが―ドン・キホーテ的なものが潜んでいるのです。(p140)