ギリシャ古代社会研究

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『ギリシャ古代社会研究―先史時代のエーゲ海
 ジョージ・トムソン 池田薫訳 岩波書店 1954

忘れてはならぬ事は、ゴードン・チャイルドも指摘しているように、メソポタミアの最も賃金の低い労働者といえども、新石器時代の自由で平等な村民よりも豊かに暮らしていたということである。都市革命は生活水準の絶対的向上をもたらしていた。一方ではまた、もしわれわれが労働生産性の巨大な増加を考慮に入れるならば、相対的には彼らが貧しくなったことも明かである。この革命から得た利益は平等に分配されはしなかった。新経済の膨脹を結局停止させるに至った原因はまさにこれであった。支配階級がますます増大する余剰部分を贅沢な生活にささげている時に、人民大衆はその購買力を一方的に制限されて、必需品と見なされるようになった多くのものに不自由した。その間に都市国家は原料と市場を求めておたがいに競争を始めていた。その結果支配階級は第一次的生産者たちの搾取を強化することによってその生活水準を維持することしかできないようになった。この矛盾から逃れる道はなかった。商業競争が戦争を早め、これが青銅の武器と野心的な目的とを以て戦われた、そしてついに国全体が次から次へと一連の帝国のもとに暴力的に統一され、その中で階級闘争がいよいよ先鋭化して、新しい形態で一層大規模に戦い抜かれることになった。(p5)