インド・ユダヤ人の光と闇

it

 『インド・ユダヤ人の光と闇―ザビエルと異端審問・離散とカースト
 徳永恂・小岸昭 新曜社 2005


インドとユダヤ人の関係は、一六世紀以降のヨーロッパ人の到来によって一変するが、じつはポルトガル、オランダ、イギリスという支配者の交代は、そのまま西欧における「近代」もしくは「啓蒙」の発展段階に対応しており、その段階に相応した「ユダヤ人問題」の変容は、インドにおけるユダヤ人問題を、たんにローカルな特殊ケースではなく、近代の本質的局面を表わす一つの典型たらしめているように思われる。むろんその場合でもヒンドゥー教カースト社会での寛容という特殊インド的な背景が重要な意味をもつ。しかし西欧中心主義的な問題構成を離脱しながらも、問いは常に近代の本質への問いに帰っていく。(p28-9)