スピノザと政治的なもの

sk

『スピノザと政治的なもの』
 工藤喜作・桜井直文編 平凡社 1995


 国家とは「諸力の関係が物質的に凝縮されたもの」というプーランツァスの言葉を、スピノザは、文字通り〔自分の言葉として〕書くことができただろう。たしかに、スピノザにおいて、搾取する者と搾取される者の間の力の関係は、いつも変わらない背景としての役割しかほとんど果たしていない。というのも、「隷属者」は、常に定義上、あらかじめ敗北しているので、階級闘争が歴史の原動力となることはないからである。しかしそれにもかかわらず、歴史を創るのはやはり大衆である。というのも、国家が自己の権力を行使するために依拠する力は、「多数者〔大衆〕の力」なのだから。そしてこの力こそ、各主体〔各臣民〕が国家に譲渡し、また、日々繰り返し譲渡し続けている力であり、しかしまた、物理的には依然として各主体の力なのである。(p129-130)