趣味の植物採集

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 『趣味の植物採集』
 牧野富太郎 三省堂 昭10


 數百種の木も數千種の草も其形ちは無涯無量であるが、悉く一の原則に由つて成り立つてゐる事を知り、種類も能く解り、日に月にそれに啓發せられて興味はいやましに増加するばかりである。かういふ事は室内で讀書したからとて成し遂げ得るものでなく、野外に出て植物に接してこそ初めて其好結果があるわけである。殊に野外に出づればおのづから運動もでき、新鮮なる空氣も吸はれ、尚且つ日光浴も出来て、身體は健康になり長壽を保つに至るべきで、實に一擧兩得といふべきものであるから、諸君は盛に野に山に其天然場裏に於て、知識と興趣と健康とを贏ち得られん事を御すゝめする次第である。(p4-5)