『独身者の思想史―イギリスを読む』
土屋恵一郎 岩波書店 1993
ロックが一八世紀を準備して、ベンサムが二〇世紀を準備した。社会契約論や功利主義の背後には、ホモ・エロティクスへの感情がうごめいている。こうした考え方が、スキャンダリズムであることはいうまでもない。思想史をスキャンダルの歴史に変えてしまうことである。(ⅱ)
ヒュームがそうであったようにベンサムは「自然法」をみとめない。それはフィクションである。人間がつくった虚構である。人が「反自然的」といい「不純」という時、そこで意味されていることはその言葉をつかっている人間の感情にすぎない。(p178-9)