本来性という隠語

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 『本来性という隠語―ドイツ的なイデオロギーについて
 テオドール・W・アドルノ 笠原賢介訳 未来社 1992


 何が隠語であり、隠語でないかを決定するのは、その単語がそれ固有の意味に対抗して超越的に自己定立するような口調で書かれているかどうか―個々の単語が、文や判断や思考内容を犠牲にしてエネルギーを負荷されているかどうかにある。従って、隠語の性格は、極度に形式的であると言えよう。つまり、隠語は、それが欲する事柄が、〔隠語の〕言葉だけを語ることによって、言葉の内容とは無関係に、あらかた感知され、受け容れられるよう配慮するわけである。隠語が、望みどおりの効果を持った脈絡を生み出そうとして操作するのは、言語にある前概念的な要素―模倣的要素である。(p13)