『暴力階級とは何か―情勢下の政治哲学 2011-2015』
　廣瀬純　航思社　2015


身体の様々な箇所でそれぞれ個別的かつ局所的に生じる欲動(部分欲動)のなす群れはどこまでもアナーキーなものであり、何らかの特権的一点の下でひとつの包括的「全体」に統合されることなどけっしてない。あるいは、より厳密には、そうした「全体」らしきものが現に確認されるとしても、それは部分欲動たちの雑多なざわめきがその傍らにたまたま生じさせる「偶有的な効果」(一種の剰余価値)に過ぎず、それを以て部分欲動たちのざわめき自体(「原因」)を説明することはけっしてできない。「闇」を形成するのは部分欲動たちの演じる「複雑なドラマツルギー」のこの非統合性なのだ。(p246)