思考について

sk

『思考について』
 ギルバート・ライル みすず書房 1997

無意味な考え方を痛烈に非難するということがわれわれの知的健全さを保持するために有効であるということは改めて言うまでもない。人間の心に関する無意味な理論にわれわれが与することのないようにというライルの配慮はまさしくここに由来している。ライルは彼の哲学的著作の大半において、われわれが隠れた霊妙な「心的過程」というものの存在を認めることによって桜草の咲くパラドックスの小道へと導かれるに至るそのさまざまな道程を示すことに専念している。他方彼は、哲学的混乱の原因を生み出すもう一つの要素が存在するということ、すなわち、われわれの所有するすべての概念が縺れあってかたまりになる傾向があるということを認識し損ねること、にはっきりと気付いている。われわれの理論を秩序立て理解するためには、往々にして、それに関連する全領域を探索し、同時にそれに隣接する諸概念を扱わねばならないのである。(p17)