季刊フィルム №3

kf

 『季刊フィルム №3』 フィルムアート社 1969

[モンキー・ビジネス]のなかで、われわれは、マルクス兄弟に再会する。彼らは、そこでは、それぞれ自分に固有の型をまもり、自信満々、相次いで起こるいろいろな事件とうまく折り合いをつけようと身がまえて(その気配はあきらかだ)いるのである。[アニマル・クラッカーズ]においては、それも始まる早々から、既に、各登場人物が、そろいもそろって面目を失墜してしまっていたのに比し、ここでは、映画の4分の3が過ぎるまでは、他愛なく遊び興じ、おもしろおかしくふざけ散らしている道化たちの大はしゃぎの場面が続くのだ。その馬鹿さわぎの場面のいくつかは、非常にすぐれたものであることも、言っておこう。ものたちや動物たちや音、主人や召使いや客たち、などのいっさいが、その時、興奮の渦にのみこまれ、蹴とばし合い、敵意をむき出しにし合うのだ。さらにそれに、マルクス兄弟のひとりが、恍惚と明晰さの同時にないまぜになった口調で解説をくだす。彼を支えるのは、彼自身がついに解き放つことに成功した精神であり、彼は、そのたけりたつ精神の解説を、事のはずみで、あれよあれよという間もなく、引きうけてしまったかのようだ。(p104)