大衆プロパガンダ映画の誕生

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『大衆プロパガンダ映画の誕生
 ―ドイツ映画『ヒトラー青年クヴェックス』の分析』
 グレゴリー・ベイトソン 宇波彰・平井正訳 御茶の水書房 1986


 私は、観客がこの映画から学ぶものは、主人公がはっきり示している感情を模倣したり、彼の意見を採り入れたりすることではなく、むしろ、観客はプロパガンダの製作者の考え方を学び取るのだと考えている。私は、ナチスがどういう種類のひとだったかを知ることに関心がある。そして、それを知るためには、観客はこの映画から、映画の製作者たちがそこにまとめて入れたものが、芸術的に適切なものだと認めるようになったのだと考えなくてはならないだろう。実際、観客は意識的にせよ無意識的にせよ、ナチスの思考の習慣を獲得して行くと考えなくてはならないだろう。(p21)