地下ロシア

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『地下ロシア』
 ステプニャーク・クラフチーンスキイ 佐野努訳 三一書房 1970


 過去とくらべて革命運動が非常に弱いことも、また疑いのないことだ。常にそういうものであるが、これと平行して、より穏健な形態の反政府行動も弱まった。どんな公然とした行動も起こさぬまま、鬱積した感情が社会の奥深くに隠れひそんでいる。われわれの時代は無風の時代だ。どこから、そして、どのような形で嵐は襲いかかってくることができるのか? 運動が、古い実験ずみの秘密結社の勢力に十分合う、おそらくは最短路である方法、つまり一連の陰謀計画によって革命精神を鼓舞する道を進むということは、可能なことなのだろうか? それは、おそらく不可能であろう。歴史の舞台では、再度上演されることはないものである。それに、概して、何事も、前もって作成された処方箋通りにはいかないものである。(p276)