ローベルト・ヴァルザー作品集5

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『ローベルト・ヴァルザー作品集5―盗賊/散文小品集Ⅱ
 新本史斉・F.ヒンターエーダー=エムデ・若林恵訳 鳥影社 2015


 わたしが考えるに、身の丈からすれば心細やかな同行者の膝にすら達しない、共にこの世を生きる存在に眼をとめることは、好もしいことではないだろうか。
 わたしの確信するところでは、そんなふうにごく身近にありながらも縁遠い、目立たないながらも注目に値する、めぐりめぐりつつも同じままである点においてこそかけがえのない、平々凡々な取るに足らぬものたちを見るには、注意深くあることが習いとなった眼差しが必要不可欠なのである。(p297)