
『起源の小説と小説の起源』
マルト・ロベール 岩崎力・西永良成訳 河出書房新社 1975
「世界にたいするお前のあらゆる闘争において、世界を援けよ」―おそらく、彼が完遂することと同時に矯正することを望みやまなかった自分自身のドン・キホーテ的行為の破壊的ラディカリスムのことを考えながら、カフカはそう言った。まさしく、そこにこそ、小説が従うことができ、また現にその歴史を通して従ってきた二つの大きな流れを分かつ分割線があるのだ。なぜなら、厳密に言って、小説を制作する方法は二つしかないからである。ひとつは世界を正面から攻撃しながら、世界を援ける現実主義の《私生児》の方法であり、他は知識と行動の手段をもたないために、逃避したりすねたりすることによって、闘いを巧みに避ける《捨子》の方法である。(p50)