神学・政治論(下)

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 『神学・政治論(下)』
 スピノザ 吉田量彦訳 光文社 2014

 ひとは誰もが自然のもとに生まれ、人生の大部分を自然のもとで送るわけだが、この自然の権利や決まりというものは、誰もしたがらないことや誰にもできないことを除いて、何一つ禁じていない。争うことも、憎むことも、怒ることも、騙すことも、衝動によって促されることは何一つ否定されないのである。そしてこれは特に驚くべきことではない。というのも、自然はそもそも人間理性の法則によって仕切られているわけではなく、したがって理性がそうであるように、本当の意味での人間の利益や人間の保持だけを目指しているわけではないからだ。自然を仕切っているのはむしろこれ以外の無数の法則であり、こちらは人間がそのごく一部にすぎない、自然全体の永遠の仕組みに関わっている。あらゆる個物は、もっぱらこの仕組みの必然性に基づいて、特定の仕方で存在し活動するよう決められているのである。(p153-4)