『弁証法的想像力
-フランクフルト学派と社会研究所の歴史 1923-1950』
マーティン・ジェイ 荒川幾男訳 みすず書房 1975
「批判的理論」は全体性と契機の相互作用に関心を注いだけれども、ホルクハイマーとその他のものたちが、「史的唯物論者は、歴史的主体に一個のモナドとして出会う場合にのみ、それにアプローチする」というベンヤミンの主張を、何の留保もなく承認することはありそうにもないことである。かれらの思考様式は、つねにかれのものより説明的であったし、また、さまざまな社会現象のなかの非連続性と媒介を暴露することに、より関心を集中した。ベンヤミンにとっては、非同一性の重要性は、かれの同僚たちが論ずるほど大きなものではなかった。その結果、かれは、かれらほどには主観性の救済に関心をもたなかった。かれの「休止した弁証法」は、「批判的理論」よりもはるかに静態的で直接的なものであった。(p288-9)