未完の帝国

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『未完の帝国―ナチス・ドイツの建築と都市
 八束はじめ・小山明 福武書店 1991


我々は今ようやく、神話の解体、そしてナチス・ドイツそのものの歴史的考証から離れてナチス・ドイツとは何だったのかということを考えられる状況に到達し始めていると言うことができる。それも建築を通して行うことが必要とされているのである。ナチス・ドイツの建築が何であったかを考えることは、ナチス・ドイツが何であったかを考えることに等しい。 現在の研究はこうした観点に立つものであり、それゆえにこれからの研究にとってむしろ重要なのは、ナチス・ドイツの建築と二〇年代、三〇年代の同時代の他のムーブメントとのイデオロギーレベル・形態レベルにおける相関性であり、大衆社会との関わり、そしてさらには現代との関わりについて考察することである。(p290)