『写真解説 合気道入門』
藤平光一 東都書房 昭和42
よく、何事かを学ぼうとする人の中には、「俺はそう簡単にはだまされないぞ」などと、今までの自分の経験知識から判断して、得意になつている者がある。こういう人は、自分の枠以上に、一歩も前進できない人である。黒い眼鏡をかけて見れば、すべてが黒く見える。濁り水が一ぱい入っている容器に、新たに清水を入れようとしても、その大半はこぼれて入らない。何ごとも考えずに、ただ盲目的に信ずることも困ったものであるが、ただ懐疑的に否定して喜んでいる者も困ったことである。心の蓋を閉ざしている者には、真理は入らない。そんなことにこだわらずに、心を虚しうし、磨き抜いた気持になって臨めば、自ら、黒は黒、白は白、是は是、非は非と正しく心に写るのである。(p41)