イスラーム哲学

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『イスラーム哲学』
 ムハンマド・バーキルッ=サドル 未知谷 1994

 ムスリムをイスラームへの回帰に駆り立てる知的起爆剤となった本書は、同時に外部の観察者にとっても、イスラーム、ないしは現在の伝統への回帰現象を理解するために格好の著作と言いうるであろう。この著作はイスラームの文化圏にとって本来的なものが何であり、それが国際的な政治的、思想的状況の中で、自らを取り巻く主導的な力といかに関わり、それに対していかなる自己主張を試みようとしているかを、最も端的に開示しているのである。一読して明らかなように、本書は現代とイスラームの知的接点、臨界領域を推し量るためにはまたとない著作であると同時に、既に挙げた『イスラーム経済論』とともに、イスラームが単なる精神宗教ではなく、例えば思想・経済体制という領域において、いかに明確な自己主張を持つものであるかを、われわれに如実に知らしめてくれるのである。(p2-3)