イスラーム誤認

ii

 『イスラーム誤認―衝突から対話へ
 板垣雄三 岩波書店 2003


 それにしても、日本社会では、「現代世界においてなぜイスラーム教徒のあるところ紛争・戦争が多発するのか、それはイスラームという宗教がもっている性質のためではないのか」という疑問が、つねに頭をもたげるようである。そこから、本書では、この疑問に対する答えを提示するとともに、そもそもこの疑問のいだき方に影響を与えている欧米のイスラーム観ことに伝統的な偏見・誤解と、それをそのまま受容することを許した日本社会の伝統的世界像とについて吟味し、日本から新たなイスラーム理解を切り拓くことにより、イスラーム認識の転換を世界に向かって提案していく可能性を検討するのである。(ⅷ)