パレスチナへ帰る

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『パレスチナへ帰る』
 エドワード・サイード 四方田犬彦訳・解説 作品社 1999

問題の根本にあるのは、ユダヤ人とパレスチナ人の体験は、厳密にいって、互いに深く結合しあった構造をなしているということである。双方が分離したほうがいいと望むことは、そのいずれもの自己同一性を偽物にすり替えてしまうことだ。未来を分かちあうことができるためには、われわれは自分たちの歴史が彼らの歴史と結びついているのだと、認識しなければならない。にもかかわらず、事態はいまだに見通しのきくものとはなってはいない。そして、どのような未来がアラブ人とユダヤ人を、それぞれが排他的傾向の企てから解放されたときに、連れ立って理解することになるのだろうか? 排他的傾向の根底にある拒否とは、敵対しあう二者のうちの片方を排除しようとする。そこに横たわっているのは政治的視点というよりも、むしろ神学的視点である。これこそが真実に挑戦すべき相手である。それ以外のことは、すべてそう大したことではない。(p129)