哲学するための哲学入門

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 『哲学するための哲学入門―シェリング『自由論』を読む
 叢書シェリング入門5 平尾昌宏 萌書房 2010

 要は、「哲学する」という観点からすれば、哲学史に取り込まれてしまって、そこから出てこられなくなるのがまずいわけである。逆に、過去の哲学者たちから学んだものを自分流に消化し、自分の思索に役立てればよい。実際、大哲学者たちは、それぞれに独自の哲学史観とも言うべきものを持っているし、そこにこそ彼らの本音が現れる。『自由論』の場合も、汎神論概念をめぐって既にそれが見えたが、それはヤコービの批判に対する防御的なものとも言える。しかし序論後半はより積極的に、自分の考えを構築するために哲学史を活用している。〈実在論と観念論〉という枠組み、実在論と観念論それぞれの代表としてスピノザとカント、フィヒテをモデルにしている点である。しかし、スピノザたちに対するシェリングの態度、それらを批判的に摂取しようとしている態度を見れば、この枠組みが既にシェリング自身のものになっていることが分かる。(p89)