ノミ、サーカスへゆく

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『ノミ、サーカスへゆく』
 文 金井美恵子 絵 金井久美子 角川春樹事務所 2001


 とりわけ、「ノミのサーカス」の話しには、どんなノミも、針の先より小さな眼をキラキラ輝かせ、針の先より細い前肢をこすりあわせて興奮いたしました。
 「あたし、ノミのサーカスに出演できると思う?」と言って、ポンと跳びあがってクルクルクルと空中で三回転して見せる元気なノミもいて、「サーカスの女王」をめざしてネコからネコを跳び渡って旅するノミは、トラーから吸った〈ち〉で汚れた口の周囲を、長い前肢でトラーの柔毛を少しばかりつまんで、たいへん優雅にぬぐい、「実力は、そこそこ、ね。でも、サーカス・ショーじゃ、そんなもんでは通用しないのよ」と、手厳しい調子で決めつけました。(p48)