あたらしい狂気の歴史

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 『あたらしい狂気の歴史―精神病理の哲学
 小泉義之 青土社 2018

 たしかに反精神医学は狂気の植民地化を終わらせた。脱病院化と地域精神医療化は医師においても常識化した。ところがポスト殖民地主義の時期になって、今度は、狂気は別の問題として立ち現われてくる。地域での社会問題として、学級運営の問題、就労の問題、犯罪予防の問題、路上生活の問題として立ち現われる。この社会的-警察的な分割=分配の体制、ノーマライゼーション社会においては、狂気は「絶対的な外部」として出現することなど絶対になく、あくまで問題化されるべき何ものか、問題化されるべき特殊なリアリティとして立ち現われる。そのようにしか立ち現われない。一難去ってまた一難とでも言えるわけだが、大半の人は、一難が去った後に来るものを難とは思っていない。思っていても、大半の人は、一難去って別の一難が来るまでの狭間に垣間見える「何ものか」を感知することはない。(p116)